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筒描 皿

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類品を見ないので時代も産地もはっきりとしたことはわからないが、おそらくは信楽の幕末−大正頃のものではないかと思う。
このようなものは見たこともなく、予想だにしないものであればこそこれを見せられたときには思わず嬉しくなった。

技術の上から言うならばこれは日本のスリップウェアだ。
石混じりの荒土を分厚く轆轤して白掛けしたものに鉄泥で線を引いているのだが鉢の曲面に応じて線は流れる。
ただし紋様した後に型作りで仕上げる英国のものとは違って、この鉢を特別なものにしているのはこの紋様の流下である。
流れることを陶工が予期しなかったはずはないと思うが、そこに果たしてどんな紋様が生まれるかという事まではコントロールできるものではなく、この思いがけない紋様には必ずや喜びを感じたのではないかという気がするのだ。







by hanakari | 2019-05-20 12:49 | つちのもの

丹波 流釉徳利

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平安末期に開業した丹波の窯では中世古窯がどこでもそうであったように壺、甕、すり鉢がその生産の中心でしたが、江戸期に入って徳利が多く作られるようになりました。
酒に限らないとしても液体の保存の需要が増したのでしょう。
江戸初期は船徳利や辣韮徳利と呼ばれる大型のものが中心で、やがて種類を増し幕末頃にはえへん徳利、蝦徳利、傘徳利、浮徳利、蝋燭徳利などなどその技法もかたちも多様なものが作られるようになりました。
明治、大正、昭和前期は地名や酒屋の屋号を筒描きした通い徳利が全盛となります。
ずいぶん広い範囲の地名を描いたものが残っていることからすると、鉄道や道路の整備によって販路が全国に拡大したのであろうということがわかります。

こちらの徳利もやはり明治頃のものでしょうか。
この姿は屋号を描いた通い徳利と同じですが、江戸期の気配を残した丹波独特のあたたかみのある白掛けした肌に鉄泥を流しています。
鉄地に黒流しなどの類品もしばしば見かけますが丹波のこの時代頃までの白は特別な魅力があるように思います。




by hanakari | 2019-05-19 10:26 | つちのもの

藤井佐知さんのピッチャー

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藤井佐知さんの作品を見てお名前を知ったのはもう随分昔のことで、黒地に黄色い線がうねうねと走った蓋物でした。
それは骨太ではありながら非常に冴えた造形の感覚とともに低火度釉独特の美しい風合いの陶器で、それ以来ひとつ手元に良い物をと願っていたのです。
そう多作の作家ではないとはいうものの思いを込めてずっと探していたので何度かのチャンスはあったのですが、買い物のことですから値段が折り合わなかったりでなかなか御縁のないままに年月が過ぎたのです。
その後たくさんの作品を見る機会もあり、ますます思いを募らせていましたがようやくこのピッチャーを最近手に入れることが出来ました。
藤井佐知さんの作としてはもっと良い物がいろいろあるのは確かですが、それでも弛緩のない独特の美意識とあの美しい風合いを備えています。

これは自分の場合でもそうなのですがスリップウェアに取り組む仕事は、あの独特の様式感がはっきりした英国のスリップウェアが魅力的でありすぎるが故になかなか古の仕事の影のようなものになりがちな弱さも感じます。
これは知れば知るほど抜け出しにくい罠のようなもので、なかなか厄介なことだと思いますが、かと言って勉強不足の表面的な真似っ子仕事に生命があるかというとそうも思えないのが事実で、これはなんでもそうなのですが知った以上はとことん学んで進むよりないかと思うのです。
お手本がある仕事というものの難しさを感じます。
そんな中で今ほど情報に恵まれないという、時代としてもある種逆の意味での恵みはあったのでしょうが、藤井佐知さんや舩木道忠さんのお仕事は英国の仕事に引きずられ過ぎないで真に日本の陶器としてのスリップウェアを生涯求められたという点で大変尊敬しているのです。
by hanakari | 2013-06-02 21:52 | つちのもの

コーニッシュジャグ

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素焼きの胴の口元にだけ申し訳ばかりに化粧土と釉薬をまとったなんとも粗末なこういう水差しは20世紀になっても英国のコーンウォールで大きさも大小様々に盛んに作られていたようです。
全体の姿や焼成は中世の古陶の伝統を継ぎ、化粧土と黄色いガレナ釉は18−9世紀に盛んに作られたスリップウェアそのままで、非常に英国の伝統的なやきものの陶脈を色濃く引き継いだものかと思います。
ウェットハンドルと呼ばれる轆轤した後に柔らかい粘土紐を引き伸ばしながらかたちしたこういうハンドルの付け方をバーナード・リーチさんが学び、小鹿田や出西などの日本の窯に伝えたものが今ではすっかり定着して、自分もマグカップやジャグの持ち手を立杭の清水俊彦師匠のところで学んだこのやり方で作っていましたがようやく直接教わることができました。
by hanakari | 2013-04-05 00:50 | つちのもの

丹波 いっちん壺

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あけましておめでとうございます

丹波の窯で幕末期に作られたいっちんの小壷です。
今は失われていますが元々は蓋があって珍味など入れたものです。
いっちんというのはクリーム状に溶いた泥を細く絞り出しながら描く装飾のことで、これもスリップウェアと共通の技法といっていいと思います。
英国のスリップウェアや丹波のこういうものにほぼ同時に惹かれて自分は陶器を作ってみたいと思ったのです。

長い間更新しないでおりましたが2013年もどうぞよろしくお願い致します。
by hanakari | 2013-01-01 00:01 | つちのもの

馬の目皿

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たくさんの目玉が見つめているようなこの皿は明治頃から作られはじめたのではないかと思われる瀬戸の馬の目皿と呼ばれるものです。
かなり厚手に轆轤をひいたがっちりとした作りはほぼ同時代にやはり瀬戸で作られた無地の石皿とも似ており、またおそらくは用途も需要も共通のものではなかったかと思うのですが、はたしてどういうところからこの印象的なデザインが生まれてきて定着したのかはわかりません。
今に残る品も相当多数あることからすれば長年にわたってかなりの数の馬の目皿が当時焼かれていたことは間違いないと思います。

この馬の目皿については大正末に現地で発見したスリップウェアと共に英国から戻ってきた濱田庄司とそれに大いに感動した河井寛次郎が京都市内の魚屋で使われていた馬の目皿を見付けて大変惹かれたといいます。
その時に二人はスリップウェアの日本版のような皿であると思ったそうですが、実際に数年の後にスリップウェアの技法をたくさん手がけていた河井寛次郎が馬の目紋様のスリップウェアも作っています。
そのころまでは普通に暮しの中で馬の目皿は用いられていたのです。

写真の皿はぼく自身がまだ自分で陶器を作ってみようともしていないがやきものに興味を持ち始めた頃に東寺の朝市で見つけて手に入れたものです。
大学に行く前に早朝から一周りして、まだまだやきもののこともこういう古いもののことについても知識もない頃に玉石混交の様々なものを手に取って見れるよい機会でした。
すでに二十数年も昔のことになってしまいましたが当時はたくさんの露天がひしめきあう市を一周りすれば今思ってもいろんな貴重なものがありましたし、特別珍しい訳でもない馬の目皿などは幾つか見つかったのです。
そのなかでも釉薬の調子や紋様の穏やかな描きぶりが気に入ってこれを選んだことや、当時の自分としては不慣れな、そして思い切ったこの買物のためにいっしょに行った友人がずいぶん根気よく値段を交渉してくれたことを思い出します。
by hanakari | 2011-01-28 02:58 | つちのもの

kneik SOAP

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先日こんな思いがけない素敵なプレゼントをいただきました。
包み紙を解いてみると竹炭と米糠と米油でこしらえたスリップウェアです。
スリップウェア好きのぼくのためにこんなふうに工夫して作って下さったのです。
英国の古いスリップウェアに乗せて。

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by hanakari | 2010-11-03 23:35 | 日常

モロゾフ

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いただきもののチョコレートです。
お菓子や料理にも2色のクリームやソースでしばしばスリップウェアと同じように紋様がつけられています。
一方はそういうクリーム状の材料自体が持つ性質、そしてもう一方は西洋の共通の美意識や文化による装飾本能のようなものを両親としてこういう紋様はチョコレートにもクッキーにも陶器にも生まれてきたのでしょう。
自作の似たような紋様のものに乗せてみました。
by hanakari | 2010-11-02 21:34 | たべもの

イギリスのスリップウェア

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古い英国のスリップウェアにはかなり多様なものがありますが中でも黒地に黄色い紋様の一連の作にも大きく大別して二つのものがあります。
一方は淡々とした長く続く線がかえって無地性を感じさせる不思議なほどに静的な縞物で、他方は大胆な抽象紋様を描いた動的な印象のものです。
この写真のものは大きく割れてしまってはいるものの後者を代表するような生命感の強いものです。
単純な波線紋様ではありますがその勢いとスピード感と共に太い線と細い線の対比が鮮やかで感歎せずにはおれません。
また深い黒地に鮮やかな黄色の色彩も上々で、使い込まれて煤けた真っ黒な土肌の表情もうつくしいものです。
by hanakari | 2010-08-27 01:00 | つちのもの

英国と阿蘭陀のスリップウェア展

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京都の北白川にIRISさんという西洋骨董を扱うお店がありました。
初めて訪ねたのは1997年の17世紀オランダタイル展の時ではなかったかと思いますがそれ以後もオランダのデルフトのことなどいろいろと教わりながらお世話になっております。

スリップウェアも歴史的にはオランダがイギリスのものに先行しているようで、これはこれで独特の軽やかな作風のものが多く作られています。
そういうオランダのものはこれまでもたくさん扱われてきたイリスさんですが、今回店舗の移転を機にアンティーク イリス 麩屋町ギャラリーとしてリニューアルし、その最初の企画として4月28日より「英国と阿蘭陀のスリップウェア展」を開催されます。

英国の古いスリップウェアが売り物として出るのもそう多くはないことですが、それがこのような企画展としてまとめられることはさらに珍しいことではないかと思います。
知っている限りは1929年頃に鳩居堂で行われた「西欧工藝展覧会」、それからこれは販売の会であったとは確認しきれていませんが1972年日本橋三越で行われた「18~19世紀 スリップウェア陶器展」、そして1981年新宿の古道具坂田さんによる「英国スリップウェア展」、そして近年ではアメリカのもののほうが多かったのですが2004年の京都寺町の大吉さんによる「スリップ・流掛釉展」くらいしかなかったのではないでしょうか。
今回のイリスさんの会もスリップウェアに関心のあるものにとっては絶対に見逃してはいけない貴重な機会ですのでぜひご覧頂きたいのです。


4月1日追記
ぼく自身は初日の朝に見てきました。
縞や波線の描かれた皿や鉢類は日本でもずいぶん人気が出てきましたがそれらとはまた別系統の轆轤を使った壺やカップなどまだまだ日本では見る機会のあまりないようなものもいろいろと並んでいました。
イリスさんのホームページに展示の様子がアップされましたので紹介します。
by hanakari | 2010-05-01 08:55 | つちのもの