流描き 盒子

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ぼくが英国のスリップウェアのうつくしさにこころを鷲掴みにされたのは1989年の春に兵庫県立近代美術館の「セント・アイヴス」展に出展されていた濱田庄司旧蔵の角鉢を見た時でした。
おそらくこういうスリップウェアが日本に初めて入って来たのは濱田庄司が1920年から3年半にわたるリーチとの英国での作陶生活を切り上げて帰国した1924年春のことで、その帰国に際しての荷物の中に何枚かのスリップウェアを入れたとのことです。
濱田はその後も何度も渡英していますからその角鉢がその時のうちのひとつかどうかはわかりませんが、ともかくこの角鉢も生涯身近に置いて今なおその晩年に設立した益子参考館に所蔵されているものでした。

ぼくのやきものの師匠の師匠のそのまた師匠はこの時に濱田が持ち帰ったスリップウェアにたいそう驚きそして感激してこれを大いに研究し、技法を模索しながら昭和の初期にたくさんのスリップウェアの作品を作りました。
1930年に作られたこの緑釉の盒子もやはりそのなかのひとつです。

これはなにも根拠のない空想なのですがこのときの最初のスリップウェアのうちのひとつにぼくを一瞬で鷲掴みにしたあの角鉢もあったのではないか、60何年か前に同じものを見ていたのではないかというような気がするのです。
同じものを見て同じように夢中になった、それがぼくの空想の中の『六十年前の今』の物語です。
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by hanakari | 2009-07-25 01:25 | つちのもの
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