藤井佐知さんの作品を見てお名前を知ったのはもう随分昔のことで、黒地に黄色い線がうねうねと走った蓋物でした。 それは骨太ではありながら非常に冴えた造形の感覚とともに低火度釉独特の美しい風合いの陶器で、それ以来ひとつ手元に良い物をと願っていたのです。 そう多作の作家ではないとはいうものの思いを込めてずっと探していたので何度かのチャンスはあったのですが、買い物のことですから値段が折り合わなかったりでなかなか御縁のないままに年月が過ぎたのです。 その後たくさんの作品を見る機会もあり、ますます思いを募らせていましたがようやくこのピッチャーを最近手に入れることが出来ました。 藤井佐知さんの作としてはもっと良い物がいろいろあるのは確かですが、それでも弛緩のない独特の美意識とあの美しい風合いを備えています。 これは自分の場合でもそうなのですがスリップウェアに取り組む仕事は、あの独特の様式感がはっきりした英国のスリップウェアが魅力的でありすぎるが故になかなか古の仕事の影のようなものになりがちな弱さも感じます。 これは知れば知るほど抜け出しにくい罠のようなもので、なかなか厄介なことだと思いますが、かと言って勉強不足の表面的な真似っ子仕事に生命があるかというとそうも思えないのが事実で、これはなんでもそうなのですが知った以上はとことん学んで進むよりないかと思うのです。 お手本がある仕事というものの難しさを感じます。 そんな中で今ほど情報に恵まれないという、時代としてもある種逆の意味での恵みはあったのでしょうが、藤井佐知さんや舩木道忠さんのお仕事は英国の仕事に引きずられ過ぎないで真に日本の陶器としてのスリップウェアを生涯求められたという点で大変尊敬しているのです。
by hanakari
| 2013-06-02 21:52
| つちのもの
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