このあたりではコゴミは4月のものだが北海道大雪山の麓から届いたというコゴミを御裾分けしてもらったのでお浸しにして頂いた。 フキノトウやワラビなんかでもそうだがこういう季節のものを頂くというのは実際の美味しさはもちろんのことだがさらにそれ以上のありがたみが嬉しい気がする。 この白磁は砥部で仕事しておられた池本忠義さんの御作で10数年ほども前のもの。 池本さんが大阪の個展で来られた折に「気難しい人で弱っているので話し相手に来て欲しい」と画廊側に会期中に二度ほど呼び出されてお目にかかった。 仕事は少し知っていて尊敬もしていたので一体どんな難しい人が待っているのだろうかとちょっと楽しみに行ってみると、取っ付きにくいような気難しさと人懐っこさが同居したずいぶん癖の強い妙な人だとも思ったが面白い方だった。 風貌はずいぶん老人に見えたが経歴を見るとあんがい若くて驚いたこと、会場から一緒にちょっと外へ出て二人で街を歩きながら「少し待っていて」と通りかかったスーパーに入って豚足を買って「膝の関節が痛いときはこれですぐに治るんだ」というようなことをおっしゃったなんということもない一場面を思い出す。 鯰の絵付けの皿などを作られていたが絵のない白磁のほうがずっと好きだと言うとちょっと不満そうな顔をされたが、同業のはるかに後輩なのでたとえ生意気でもかわいがってくださったのかもしれない。 鈴木繁男さんのことや砥部には温かみのある独特の良い磁土があることなどを話して下さった。 そういう材料を今では珍しく薪ののぼり窯で焼いた白磁の風合いは美しかった。 この朝鮮風の厚く轆轤で挽いてざっくり面取った鉢はその時にひとつ選ばせていただいたものだが以来気に入って使っていたし、つい折を逃して年月は経っていたもののいつか砥部に訪ねるのを楽しみにしてもいたのだ。 窯に遊びにおいでと誘っていただいたり何度か展覧会のDMを頂いたり年賀状のやりとりもあったが、どちらかの忌中を機にいつかそれも絶えてしまい、以来お目にかかる機会を無くしたままご無沙汰していたのだが昨秋思いがけないところで氏が亡くなった事を聞いて驚いた。 訃報を聞いて以来ずっと食器棚の目に付くところに置いていたがふとこの季節の食べ物を手向けてみたい気になってコゴミを盛りつけてみた。 写真はたぶん池本さんもお好きだっただろうという気がする朝鮮の膳の上で。
by hanakari
| 2011-06-18 19:28
| たべもの
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