モロゾフ

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いただきもののチョコレートです。
お菓子や料理にも2色のクリームやソースでしばしばスリップウェアと同じように紋様がつけられています。
一方はそういうクリーム状の材料自体が持つ性質、そしてもう一方は西洋の共通の美意識や文化による装飾本能のようなものを両親としてこういう紋様はチョコレートにもクッキーにも陶器にも生まれてきたのでしょう。
自作の似たような紋様のものに乗せてみました。
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# by hanakari | 2010-11-02 21:34 | たべもの

イギリスのスリップウェア

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古い英国のスリップウェアにはかなり多様なものがありますが中でも黒地に黄色い紋様の一連の作にも大きく大別して二つのものがあります。
一方は淡々とした長く続く線がかえって無地性を感じさせる不思議なほどに静的な縞物で、他方は大胆な抽象紋様を描いた動的な印象のものです。
この写真のものは大きく割れてしまってはいるものの後者を代表するような生命感の強いものです。
単純な波線紋様ではありますがその勢いとスピード感と共に太い線と細い線の対比が鮮やかで感歎せずにはおれません。
また深い黒地に鮮やかな黄色の色彩も上々で、使い込まれて煤けた真っ黒な土肌の表情もうつくしいものです。
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# by hanakari | 2010-08-27 01:00 | つちのもの

ブレッドボード

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英国の古いブレッドボードをいくつか見たことがありますがすべてはおそらくは轆轤で仕上げた丸いもので、パンを切った時の粉を集める溝の外側の部分には草花紋やBREADなどの文字が浮き彫りにされたものも多くありました。
ブレッドボードに紋様があるということはそれが食卓で用いられるものであるということに関係があるように思われます。
もちろん英国でもブレッドボードの他に日本のまな板と同じような台所で用いられる肉や野菜を切った無紋のものがあったには違いないと思うのです。

工芸品の紋様は直接的な用途とは別に使い手の心に何がしかの情趣をもたらしてくれます。
衣食住に対して人の暮らしはどこかでただ純粋な機能だけではなくそういうものを求めているには違いないのです。
しかしながら多種多様な素材の多くの物々に囲まれた現代の暮らしの中ではそういうものが一面ではやややかましく感じられるのもまた事実で、シンプルな家電や白無地のうつわなどが求められるのも非常に納得の行くことだと思います。
むろん人それぞれの好みと暮らしは様々でしょうが、一昔前のような花柄の電気炊飯器や絵付けも華やかな食器の類はすでに一般的なものではなくなりました。
確かな素材を選ぶこと、無駄のない機能的なかたちを選ぶことが現代の暮らしの中ではある意味では無紋の紋様であると思います。
自分もまた紋様のないうつくしくてかつ機能的な四角いブレッドボードが使いたかったのです。

写真のつややかな桜板のブレッドボードはワシタカ工藝の森年弘さんに作っていただいたものです。
地元の杉を用いた森さんの椅子などのお仕事は以前から少しは見知っていましたが、正直に書くと友人のところで出会って話した木を使うばかりではなく山に木を植えるという彼の理念にむしろ大いに関心を持ったのです。
実際にそういうことは良いとは思ってもなかなか誰にでも出来ることではありません。

自分がうつわを作る場合でもそうですがお互いにお互いの好みがある場合には注文でものを作るというのはなかなかにちょっとした部分が難しいのです。
そこで今回は彼もぼくもそれほど明確なイメージのないところから、最初にあれこれとブレッドボードの話しをして寸法を決め、大まかなスケッチを渡しただけで材の選択も含めておまかせしたのです。
こういうものは木の種類と木目はもちろん、板の厚み、溝の幅、溝の外側の部分の幅と傾斜の角度、角の部分の丸みの具合などが少し変わるだけでずいぶん印象は変わりますが、そういうところを実に見事なバランスで漠然としたイメージ以上の試作を作ってくださいました。
あとは角の丸みのちょっとした具合と溝と縁の幅のバランスを少し修正しグレープシードオイルで拭きあげて本当に素晴らしいものに仕上がったのです。

よくある白い樹脂のまな板と違って使えば使うほどより美しくなり、なんでもないようなものでありながらいつまでも手に触れ見ていても飽きることのないというこういううつくしい板を用い、また眺めながら暮らせるというのはありがたいことです。

森さんの工房を訪ねるといつもきちんと整理整頓されていることに感心しますが、その工房と併設の展示室を公開して7月3日より展覧会が開かれますのでこのブレッドボードとあわせて紹介したいと思います。


WASHITAKA・SHOP 一周年記念 のこのこ展
7月3日~11日 13:00~18:00
詳細はリンク先のワシタカ工藝さんのサイトにて御覧ください。

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後日追記

ワシタカ工藝さんのブレッドボードの紹介ブログにリンクを付けます。
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# by hanakari | 2010-06-27 01:38 | きのもの

英国と阿蘭陀のスリップウェア展

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京都の北白川にIRISさんという西洋骨董を扱うお店がありました。
初めて訪ねたのは1997年の17世紀オランダタイル展の時ではなかったかと思いますがそれ以後もオランダのデルフトのことなどいろいろと教わりながらお世話になっております。

スリップウェアも歴史的にはオランダがイギリスのものに先行しているようで、これはこれで独特の軽やかな作風のものが多く作られています。
そういうオランダのものはこれまでもたくさん扱われてきたイリスさんですが、今回店舗の移転を機にアンティーク イリス 麩屋町ギャラリーとしてリニューアルし、その最初の企画として4月28日より「英国と阿蘭陀のスリップウェア展」を開催されます。

英国の古いスリップウェアが売り物として出るのもそう多くはないことですが、それがこのような企画展としてまとめられることはさらに珍しいことではないかと思います。
知っている限りは1929年頃に鳩居堂で行われた「西欧工藝展覧会」、それからこれは販売の会であったとは確認しきれていませんが1972年日本橋三越で行われた「18~19世紀 スリップウェア陶器展」、そして1981年新宿の古道具坂田さんによる「英国スリップウェア展」、そして近年ではアメリカのもののほうが多かったのですが2004年の京都寺町の大吉さんによる「スリップ・流掛釉展」くらいしかなかったのではないでしょうか。
今回のイリスさんの会もスリップウェアに関心のあるものにとっては絶対に見逃してはいけない貴重な機会ですのでぜひご覧頂きたいのです。


4月1日追記
ぼく自身は初日の朝に見てきました。
縞や波線の描かれた皿や鉢類は日本でもずいぶん人気が出てきましたがそれらとはまた別系統の轆轤を使った壺やカップなどまだまだ日本では見る機会のあまりないようなものもいろいろと並んでいました。
イリスさんのホームページに展示の様子がアップされましたので紹介します。
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# by hanakari | 2010-05-01 08:55 | つちのもの

Charles J. Lomax『Quaint Old English Pottery 』

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 これは1909年にロンドンで出版されたCharles J. Lomax著の『Quaint Old English Pottery 』です。大変貴重なこの本を最近手に入れることが出来たのでここに紹介します。
 柳宗悦の「スリップ・ウェアの渡来」(1933)によると彼が丸善の2階でこの本を見つけたのは1913年のことだそうですが、この本は当時たいへん高価だったらしく、まだ学生の柳は大変にこころを惹かれながらもこれを買うことが出来ず、また柳よりもやや早くこの本を見つけていた富本憲吉もやはり高価なこの本を買えなかったといいます。しかしやがて富本は展覧会の売り上げで柳と二人丸善に行きようやくこの本を手に入れたのです。このときの様子を「富本が其大きな本を嬉しそうに抱えて持って帰る姿を今もありありと思ひだす」と柳は記しています。
 この話の後日談は濱田庄司の「英国の軟陶」(1970)によると、富本は日本橋の丸善でこの本を25円で求め、このため奈良へ帰る旅費が不足したため当時上野に住んでいたバーナード・リーチに借りに訪ねたのですが、これを見たリーチがすっかり興奮して「旅費は貸すから本はぼくに預けて置け」と言ったとのことです。
 リーチは日本で偶然にこの祖国のやきものを知るところとなり、直接的に影響を受けた沢山のその種のやきものを作りました。こういうわけでリーチ初期の仕事のなかには瑞々しいスリップウェアの名品がたくさん残されたのです。このリーチのやきものを通じて日本にはスリップウェアの種がまかれました。ぼく自身としても最初にスリップウェアに惹かれたのはこの時代のリーチの作品でした。この本はその後柳や石丸重治も求め、1916年に濱田も丸善の最後の一冊を手に入れたそうで、柳の前掲文によると「日本には5冊くらいは来ているかと思う」とのことです。ちなみに柳旧蔵の本ならば当然駒場の日本民藝館に残されているはずではないかと思うのですが、民藝館所蔵本としてしばしば紹介されているものは富本憲吉自身の手による書き込みのあることから考えてもおそらくは柳旧蔵本ではなく富本旧蔵の本だと考えられるのですがこのあたりの経緯はわかりません。

 ところで相当な資産階級であった彼らにとっても高価だったというこの本ですが、当時の物価について少し調べてみると25円というのは一般的な労働階級の家庭の平均的な月収にほぼ近いので、やはりこういう書物を買うことは相当な富裕層でなければ叶わない事だったと思います。まだ柳やリーチや濱田たちさえスリップウェアを知らなかった、つまりは日本中で誰ひとりとしてスリップウェアに興味もなかったであろうこの地点でこういう大変高価な本が5冊ほども丸善に輸入されていたということは、こういう外国の最新の文物をいち早く教養として取り入れようとする裕福な知識人たちが一定数いたということでそのことにも驚かされます。
 ちなみに手元にある本は丸善が販売したものではなく、丸善と同じくやはり早くから洋書を輸入していた神田の一誠堂のシールがついていることから考えるとその当時でさえ柳の想像以上の数が日本に入って来たのではないでしょうか。スリップウェアが日本で認識されるきっかけともなったこの本ですから今ではやはり相当数が外国の古書市場から輸入されているのではないかとは思いますが、自分としては手に入れて初めて以前から気になっていたこの本の内容を確認することが出来ました。
 ここで紹介されているのはToftやSimpsonたちの手による飾り皿などが中心で、無銘の日用雑器であるオーヴン料理に用いるような縞や格子や抽象紋様の鉢類は全く出てきません。またスリップウェアの表記も現在一般的になっているslipwareではなくslip wareが使われています。
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# by hanakari | 2010-04-16 01:56 | つちのもの