ぼてぼて茶碗

a0038380_1475494.jpg

出雲といえば松平不昧公のお膝元故に茶の盛んな土地柄だと聞きますが、いわゆる茶道とは別に民間の軽食としてお漬物やご飯を入れたお番茶を大きな茶筅で混ぜたぼてぼて茶というものが根付いていたのだそうです。
布志名の窯を中心にあちこちで近在の多くの需要に応えて作られたというそのぼてぼて茶の茶碗は豊かに張った丸い姿にぽってりと穏やかな緑釉をまとって不昧の時代のどんな茶陶よりもうつくしいものであるように感じられます。
緑釉の他にはまれに白釉のものもあるそうで、後年には宝珠の陰刻のある低火度の黄釉のものも多く作られたようですが、自分の知る限りは安来の町からほど近い母里の窯でなかなか立派な緑釉のものが二十数年前までは作られていました。
当時はまだ母里ばかりではなくこの地方の幾つかの窯で作られているのを見ましたがここのものが最も風合いもうつくしく、また古格のある姿を留めていて歓んでひとつ求めて帰りました。
母里には大きな登り窯があって仕事場の外には釉を入れた甕が並んでおり、古い時代の窯場の雰囲気をそのまま残した美しい場所でした。
山陰にはたくさんの民窯がありますがその多くは民藝派の作家的な作風の影響を受けた窯が多い中で、ここでは仕事も往時のままに続いているようなものばかりで手水鉢や土瓶など現代らしからぬ気配のものが作り続けられている夢のような窯だったのです。
そんな母里の窯を守っていたのはもう若くはない一人の陶工でしたが後継が育たずその仕事は絶えてしまったと聞いています。
このようにして江戸期以来のたくさんの窯が失われて来たのでしょうが、無理も無いこととはいえなんとも惜しいことだと思わないわけにはゆきません。

松江のobjectsさんとのご縁が出来てこの母里の窯のことを思い出しました。
画像は母里の窯のものではないと思いますが古い時代のぼてぼて茶碗です。
[PR]
by hanakari | 2011-08-29 02:27 | つちのもの
<< 壺屋 佛花器 くろもん 漏斗 >>